薫藤園ご利用者・ご家族、職員の俳句・短歌作品です。(順不同・敬称略)
平成23年秋~24年新年の作品
大浴槽柚子を浮かべて思いきり
手足を伸ばし友と語らう
老いの身を優しく支える肘掛け椅子
座り心地は殿様気分
季節ごと模様替えする薫藤園
宝船折鶴飾り新春なりし
小磯和歌子
年重ね明日の命知らねども
今生きる身の命尊し
口一つすごす鳥さえ明けに起き
朝寝は人のおろかなりけり
むくいなき歩みつづけて幾星霜
むくいられてぞ今日の喜び
金久保八千代
大津波に船奪われし漁師の友へ
千人の思い立上げ船送りたる
七連の凧に七福神絵書きて
特養ホール新年祝う
夢の中に君がいるサントワマミー
今の私の幸ラジオを聞きて
野村節子
人垣の静かに進む除夜の鐘
玉と聞く水琴窟の淑気かな
青春を詰め込みて発つスキーバス
柴崎加代子
割引きの旗なびかせて初商う
部屋中にせましと広げ歌留多取り
肩揉んでくれる孫等へお年玉
長瀬三男
朝風呂に入りて満足年始め
我が辰の幸せ願い年新
部屋の中に香りほのかに冬水仙
蛭間節子
冬うらら古きのれんの愛宕茶屋
はずしたるマフラー猫の追ひかける
おでん種母のあらばと一人言
掛谷ひろし
我々が出来るうちはと餅届く
赤飯をおまけに贈る初商
ぬひぐるみ抱きて風邪の子受診待つ
今成公江
白びたき初出勤の道に踊ふ
初春の特養慰問阿波踊り
新玉の夕日に映える幸手川
野村節子
平成23年春の作品
まだ伸びるらしき子の丈桐の花
かうもりの空塾の子の帰り待つ
反抗期の子に逆らはず蒼嵐
柴崎加代子
鮮やかに写す池の面花菖蒲
即席の舞台も作り夏祭
被災地へ支援広がる聖五月
長瀬三男
遠山に残雪光る湯治宿
風に舞ふ藤の花屑こむらさき
岡田サク子
花南天米寿の母の薄化粧
郭公や朝食前に田を回り
まず何もつけずにかじり初胡瓜
今成公江
絵手紙の恙無きかと兄の文
特養棟今年も来るつばくらめ
平山富治
薫藤園献身的な介護受け
見事なる大天白の藤の花
中庭の木々も生き生きつゆ近し
速水 浩
田水張る利根の水門開けられて
暮れなずみ青田の面に風の道
祖父の膝取り合いし子も一年生
野村節子
人の恩に恵まれ生きるわが身なる
神の恵みと有難き受く
あと幾日生きる身なるか解からねど
気強く生きよ今日も一日
八十路坂越えてますますすこやかに
白路坂来し九十二歳
金久保八千代
茜空赤き陽光しずむさま
心もかろきオーラもらう
譲られし椅子に素直に座りつつ
すでに老いたる吾れを自覚す
かぐや姫の帰りゆきしはこんな夜か
心あそばせ満月を見る
平山富治
津波とは悪魔か魔物自動車も
ビルディングさえも押し流し行く
深夜便いくとせ聞くも夢の中
フランク永井の唄声流る
庭の花手折りて飾る特養棟
老いの笑顔と出合うを願い
野村節子