薫藤園ご利用者・ご家族、職員の俳句・短歌作品です。(順不同・敬称略)
平成19年秋~冬の作品
初春や供花に加ふる松一枝 一点の曇りもなくて初鏡 太箸や何でも食べる子に育ち
拝殿の前がよく売れ熊手市 近寄りて仰げばまばら冬桜 やきいものもを長々と焼芋屋
風あらき薫藤園のおちつばき 明日知れぬめざめと知れど十二月 飾られし花いっぱいやクリスマス
柚の実を花と咲かせて冬至風呂 お正月久に集いて四姉妹
佛前のほやみがかれて初灯 容赦なく過ぎゆく時よ去年今年
三社様皆襟立てて大掃除 応接の本棚に日の入る漱石忌 独り身の老婆の庭に返り花
合掌の屋根連なりて初明り 年忘れ正座でカラオケ畳の間 炭火盛るふるまひ父の名残りかな
去年今年本の山なる子の机 ふっくらと開く幸せ福寿草 初暦いつもの場所のピンの穴 電車待つ階段下の日なたぼこ
二度と来ぬ阿寒に知床なつかしく 家族四人の旅の思い出 今は亡き柔の姿なつかしく 全て矯正の三位修める
手を背にエプロンの紐結びいる 寮母の指先蝶々表わる 真夜中に忙しき寮母はオムツ替え 寝呆し我に活を入りくる 夜勤終えすぐ朝食の配膳で 寮母の肩にエレキ絆を見る
ぎりぎりの命伝わる姥の手 握れば愛しホームの夜ふけ ふたたびの夕食欲うる老の肩 なだめやりつつベッドへいざなう
みとりつつ共に老いゆく幸せは 薫藤園のありがたきかな
幼な子が物言いたげな顔をして 重ねて見える母のまなざし
夕暮れに玄関集い座談会 ドアが開くたび我不安なり
真夜中に必ず廊下を歩く姥 夜勤の吾も歩幅合せる 面会の家族と共に散歩され ツバメの巣を見つけたと言う
きみのとしおせっかいにたずねると ほほえむきみとときをたのしむ ぼくのとしよりわかがえるきみ なつのひのまぶしいひざしまどにみて
平成19年春~夏の作品
助手席のチャイルドシート大西瓜 抱く子の寝顔照らして揚花火 祈りにも似たる蓮華の莟かな
梅雨寒の病んでみて知る人の恩
散歩道カエルと共にジャンプする 雷雲を見つけて走る母の元
車椅子押して神輿に付きゆけり 宅配便受くる泥の手草むしり ほんのりと紅さす蕾白蓮
大青田子連れの鷺に餌豊か つれだちて少年野球冷茶持て きっちりと晒巻く子が山車にのる
七夕や二人の逢瀬夢みつつ 七夕の予報気になる空模様
山路来て頬いっぱいにさくらんぼ 夜濯や寮母の手元に星明かり 変わらずや幼き日々の郭公なく
ラベンダーポプリづくりに集いの輪 鈴虫の声涼やかに子守りうた
梅雨晴間露天風呂にていやされる ほたる住む小さな流れ青びかり
手の平に光眩しき泉充つ 万緑や田舟の船頭ボランティア 県展の開催間近風薫る
寮母の手ひたすらすがるお買物 特養のわれ至福の一日 呆けてきし言へばそうねと返事する 九十近き齢の仲間よ
新緑はわが家をつつみ苔むせる 黒松は亡父の形代ならん わが蒔きし秋の七草おみなえし 特養の園を黄に染めあげし
ありがとうの老の言葉に励まされ 介護福祉士十五年過ぐ 憎さげに唾をかけられののしられ 入所初日の老と向き合う
夕暮れに老は語りぬ愛犬を 置きてホームに入りし淋しさ 人形を抱きて姥は落ち着きぬ 優しき母のまなざしをして
亡き父母につくしたりなさ知る今は 特養ホームで介護に無中 夜帰る老婆の請に逆らわず 月の明かりに共に散歩す
特養の庭に咲いたるあじさいに 夜勤の朝元気もらいぬ 手すり持ちリハビリしてる姥見つつ 夜勤明けなるわれのはげみに
ご飯ですよはーいあーんと声かけて 我れもいっしょに口をあけたり 孫よりも少しは上手とはげまして リハビリ中のぬり絵作品
おはようと起きてきた顔にこやかに 昼寝の後は朝が来る
義母病んではじめてわかるありがたさ 何事につけあまえてまかせ
にこにことオムツ外して日にいく度 痴呆の姥我れは介護士 しわのある手のぬくもりが伝わりき 今日も元気と命の重さ