俳句・短歌 平成17年の作品

薫藤園ご利用者・ご家族、職員の俳句・短歌作品です。(順不同・敬称略)

平成17年秋~冬の作品

初詣異国の人と並び立ち
出産の祝いも述べて御慶かな
命名の紙の白さよ筆始

柴崎加代子

カラオケの洩れるホールに小鳥来る
飾られし聖きこの部屋クリスマス

吉田きみ

デイサービスりんご浮かべて湯浴みして
老の身をほぐしてくれしゆず湯かな

鈴木さい

冬空のオリオン指さす小さき手
日だまりに子猫つどいて寝息たつ

桐谷ふじ子

頑固なる冬至南瓜も煮くずれし
図書館の裏手の田んぼ冬ざるる
母と子の目当てそれぞれ福袋

今成公江

冬日向髪切りあえる老夫婦
老いひとりイルミネーション見る聖夜

若旅清子

冬空にイルミネーション輝やけり
宅配で届く香りのシクラメン
柚五つにっこりと賜ぶ隣家から
冬の使者木々の間に舞いおりて

清水和江

過去未来ホームは人の世泣き笑い
 悲しみも有り楽しきも有り

今を生きる嫗の笑顔の依頼ごと
 直ぐにかなえむ明日はなきかも

小林芳雄

愛し娘の勤め帰りを待つ庭は
 暮れいく落葉の風遊びして

亡き父の手植えの柿は鈴なりて
 幹苔むして陽に光たり

古山清美

くるまいす巧に繰る片麻痺の
 嫗の後を見守りゆきぬ

うら山の渋柿たわわ熟しきて
 しばしの餌場と鶫ら集う平成17年

野村節子

平成17年春~夏の作品

夏つばき明るくもれるわらい声
つばめの子特養の窓チュッチュッと
耕せる田の面にうつる薫藤園

町田たけ子

新館の軒ににぎやか燕の子
夏来たる特養の部屋灯が点り
冷房や一人に一つ新館

吉田きみ

七夕の夜空に浮かぶ父母の上

草野仁子

三田ヶ谷の野山に咲きし花のむれ
梅雨晴れ間姿見せたる赤城山

鈴木さい

びしょぬれになっておしまひ水遊び
百合の香に噎びて仏間開け放つ
丑の日の滅法待たず鰻店

柴崎加代子

十薬の白のきはだつ雨催ひ
陣屋門くぐれば開け菖蒲園
蓮池の全景を撮り一花撮り

今成公江

雨上がりひときわ高し天の川
デイサービス花苗胸に誕生日

長森きみ

青田風自力で漕ぎし車椅子
紫陽花や笑顔のやうな毬並ぶ
万緑の弥勒野祖父の里なりし

野村節子

寝付くまで孫の隣の夏座敷
手花火の闇の歓声生まれけり

古山清美

いっせいに競そう紫陽花花手毬
初山やひたひの渕に願掛けて

須田明美

初めての浴衣の吾子に見惚れけり
農村に嫁ぎふたとせ青田道
追い来たるひとつの蛍闇に消ゆ

清水和江

結婚の門出を祝ひ胡蝶蘭
お茶よびの席に華やぎ胡蝶蘭
育ちゆく青田に鷺の美しき

若旅清子

匂ひ立つ特養の風呂ラベンダー
梅雨寒や一枚羽おる媼たち
梅雨晴れ間氷含みてみな笑顔

田口喜久子

水着手に明日の天気を聞く子かな
涼求め寝床を探し子猫たち
噴水にそっと手を出し幼き子

桐谷ふじ子

青蛙庭あっちこっちでうさぎ跳び
庭に入り頭上に格む蜘蛛の糸
落としても藤つる延びる園の庭

川邉義雄

平成17年春の作品

小鳥鳴き黄花白花春うらら
庭先の水仙の花一文字
ただ見いる桜の花や川面まで

小林芳雄

校長の胸にカトレア卒業歌
女手に守り来し畑雉鳴けり
生き字引ばかり揃ひて春祭

柴崎加代子

園児らの声の弾けて桜の実
風ぐせのつきて日暮の牡丹かな
新じゃがの煮たてに舌を焼かれけり

今成公江

落椿あちこち向くも上向くも
どことなく母に似て来し春ごたつ
白梅や身ぶり手ぶりの立話

掛谷昌子

さくら満ち淀みし川の映えにけり
試歩の杖くれたる友よ竹の秋
風光る萠黄色なる大けやき

野村節子

女学生の髪逆立たせ春一番
春の月ミラーと並ぶ交差点
春うらら入所の便り届きけり

古山清美

膨らんで土を崩せし蕗の薹
段上に一度のせては雛飾る
蒲公英の色鮮やかに河川敷

川邉義雄

窓ぎはに卒業祝ふ花一輪
名を呼ばれふるへる声の卒業式

桐谷ふじ子

昨日より今日またうれし山笑ふ
木もれ日に天使の笑みや節分草
三輪車ころんで乗れて春うらら

掛谷弘史

微笑めば微笑み返す温もりよ
 特養ホームの介護士吾は

車椅子寄せて見ませよ紅白黄色
 ホールに飾りしらんの美しきよ

野村節子