俳句・短歌 平成16年の作品

薫藤園ご利用者・ご家族、職員の俳句・短歌作品です。(順不同・敬称略)

平成16年秋~冬の作品

掃き寄するものに団栗銀杏の実
団栗のひかるものより拾はるる
せせらぎのひかりを奪ひ冬芒

柴崎加代子

こづかれて弾みどほしの風呂の柚子
晴れわたる列島天皇誕生日
店員の赤き帽子やクリスマス

今成公江

人の住む気配はなくて枇杷の花
飛びおりて終わりとしたる松手入れ
塀ごしのすずなりの柚子明るしや

掛谷昌子

増床の工事現場の小春かな
日向ぼこ湯浴みし媼いたわりつ
水仙や一りんの香に秘めしもの
亡き父の思い出ひとつ懐手

野村節子

手折りたる色濃き菊を仏壇に
出勤のバッグに潜めしひびぐすり
菜を茹でる湯気の向こうに柚香る

古山清美

すすきの穂風のなすままきらめけり
吹き抜ける風にりりしき雪の富士
川べりに色とりどりの小菊かな

小林芳雄

華やぎて近づき見たり冬夕焼
病床の窓より見ゆるる柿落葉

若旅清子

おめかしの姪の笑顔や七五三
冷え切って帰りし夫に柚湯焚く

清水和江

帰り道刈田ではしゃぐ子らの声

桐谷ふじ子

白馬岳遠廻りした六十路登山
冬はじめ一葉手に似て露天風呂
水鳥の羽音消したる瀬音かな

河邉義雄

男体の峯飛び越へて冬来たる
林枯れ眩しき雲の近づきぬ
身代りのこぶのうねりや冬木立

掛谷弘史

平成16年春の作品

切貼りのごとき濃淡山若葉
助手席の摘みたて苺匂いけり
新茶汲む心おのづと改まり

今成公江

泣きづめの保育参観麦の秋
母の日や五枚綴りの手伝ひ券
落葉松の芽吹きの遅々と奥信濃

柴崎加代子

特養の親子の縁つばくらめ
誕生会白ゆり香る園ホール
女医さんのピアス似合いて花日和

野村節子

戯れにいただく野点八重桜
藤の花胸いっぱいの香りかな
ツバメ飛びひときわ忙し田面かな

小林芳雄

雛壇をかたして兜飾りけり
次々に行く人止めて花菜土手
友からの携帯メール花咲くと

古山清美

母の日やアレンジメントのカーネーション
車いす藤の香りの届くまで
軒つばめ親子の絆あかず見つ

若旅清子

法要の鐘ふと消えし若葉風
白牡丹首かしげたり雨土産
空わかつメタセコイアの五月晴

川邉義雄

蝋梅の透きたる先に奥の宮
巡礼の身をかがめたり水温む
軒つばめ親子の絆あかず見つ

掛谷弘史

菖蒲湯に深呼吸して背を正す
四つ目垣路地裏づづっと新芽萌ゆ
たんぽぽや吾子の手引いて散歩道

清水和江