薫藤園ご利用者・ご家族、職員の俳句・短歌作品です。(順不同・敬称略)
平成26年秋の作品
車いす並びて広し実のり田へ
プランタ秋なすの色深み益し
速水 浩
テレビより寄居のバラの花見てる
窓辺から上へ下へと赤とんぼ
木村トミ
双子猫窓に見送るデイの朝
カメラ持て息子出掛ける秋日和
大和田モト江
コスモスの雨にたおされ立ち上がり
夕飯終えみちのくの秋テレビから
平山富治
野辺に咲く色あざやかにな彼岸花
園庭より見渡す限り黄金波
小磯和歌子
口に入り味まろやかないちぢくの
特養園のとれたての味
藍染のよき指導の下花柄の
ハンカチフの出来上がる
木村トミ
外出日コスモス咲きぬ道行かば
心が宇宙に融け込む思い
金木犀の一枝寮母の手折り来て
秋の香りの満ちてひろごり
平山富治
生演奏会昼餉のあとのレクリェーション
トロンボーンやギターに酔う
園児らのおゆうぎかけっこ組体操
グランドいっぱい広がる歓声
薫藤園祝の席招かれて
数多の余興に憩う敬老日
小磯和歌子
平成26年春~夏の作品
虫干のなかに二冊の母子手帳
母の血を受けて豊かな髪洗ふ
大粒の星の出揃ふ台風過
柴崎加代子
日永なる一番電車の響きゆく
茄子胡瓜もぎたて食す味のよさ
夏空の飛行機音の絶えず聞く
蛭間秀紅
色艶をほめて茄子を貰ひけり
大夕立水の早さに土流れ
松の木にはじき返され昼の蝉
長瀬三男
推敲の一句得たり七夕祭り
山迫りくるごと積乱雲
梅雨明けて街くっきりと陰日向
平山富治
父と子に大小仕立て茄子の馬
ふるさとの変はらぬ山河盆帰省
子のはしゃぐ声のつつぬけ夏の月
今成公江
不揃ひの団子まるめて地蔵盆
子と暮らす転居の便り今朝の秋
真っ直ぐに利根の行き着く稲穂道
関根としえ
己より大きな獲物子かまきり
空蝉や土にふれたる葉裏にも
ジンジャーの白き花片暮れ残る
髙鳥洋子
紫と紅の朝顔の花咲きつぎぬ
碑に添うて薄紅色のさるすべり
たっぷりと鉢植え花の守り水
野村節子
真心を込めて患部に薬ぬる
介護士の手は母のぬくもり
月毎に変わるデイの模様替え
風鈴の音涼しささそう
薫藤園四方を囲むゴーヤに
デイサービスの快適に過ごし
小磯和歌子
猛暑日を乗り切る為に作りたる
ゴーヤジュースは元気の源
七夕の願いがゆれる特養棟
全員総出の楽しいまつり
薫藤園緑のゴーヤにつつまれて
居室涼しく庭の花見る
大塚洋子
集いきて親子そろって七夕に
笑顔あふれて夢みる瞳
健康に一日散歩二十分
医師の勧めに稲の花道
島村静江
朝顔をプランターに植えてより
花色思いて日々楽しもの
つばめ五羽日影の棚で毛づくろい
のどかな声を窓辺より聞き
まれに見る暑さにめげづのり越える
ゴーヤのジュースの喉ごしの良さ
木村トミ
よさこいはきつい踊りと解りつつ
終りし後の爽快さあり
年一度八幡宮の祭礼に
踊り奉納元気もらいぬ
名越祭八幡神社へ招かれし
汗して踊る「よさこい」仲間
野村節子
平成26年春の作品
足音の父と思へり柿若葉
子の胸のふくら初めし聖五月
夏帽子夫に付き添ふことふえて
柴崎加代子
菜の花を手向けて活る今日のこと
風光る朝日に映える柿若葉
小磯和歌子
緋牡丹の盛りを雨に打たれけり
上げ下げは祖父の仕事や鯉幟
地下足袋の土の感触菊根分
長瀬三男
柿若葉ポニーテールの娘の行きし
さつき咲く古墳へつづくロードわき
藤見会バスへのり込む笑顔かな
平山富治
からまりてときにほどけて鯉のぼり
封切って淹れてくれたる新茶かな
スタンプを東屋ごとに薔薇まつり
今成公江
暖かや足湯の客のざわめきぬ
腹這いて本読む畳暖かし
磐梯の青々として夏近し
掛谷ひろし
黒揚羽たゆたふごとく舞ふごとく
捨て苗でふさぐ水洩れもぐら道
参道の木洩れ日浴びて著莪の花
髙鳥洋子
父母の墓おぼろ月夜に誘われる
百歳の母に今年の藤の花
耳悪しき吾れに鳴くてふほととぎす
野村節子
満開の桜見物デイ友と
バスにゆられて憩ふひととき
模様替えデイサビスは五月入り
真鯉に緋鯉吹流し
朝に咲き夕べにしぼむチューリップ
特養棟の庭に咲きおり
小磯和歌子
球根をプランタへ植え付けて
見事に咲きしチューリップの花
日が暮れて青く光るる満月の
卯月の夜景はホームの窓辺
木村トミ
江東北の電話通じず友の便り
思い出しては読み返す日々
背に一人乳母車で一人押した孫
年月流れ三十歳に近し
離れ住む曾孫はテレビに映りたる
可愛い笑顔四歳となりて
大和田モト
テーブルの上に置かれた春の花
眺めつ友と会話の弾む
手作りのパネルは三月ひな祭り
おすまし顔の写真撮リたり
大塚洋子
白き雲居室の窓をよぎり去り
紺ぺきの空鳩の飛び立つ
人生に後悔一つあり
「してしまった後悔」
「しなかった後悔」
薫藤園 で幸せつかも
点滴の針あと白き細い腕
術後の吾が身つくづくみつめ
平山富治
母校より藤苗一本賜りて
六十余年の花薫りつぐ
花ことば殊勝と言う雪柳
肩にふれ散る雪の降るごと
こぶし咲き赤み帯びたり半月よ
津波の傷跡癒さることなき
野村節子