俳句・短歌 平成25年の作品

薫藤園ご利用者・ご家族、職員の俳句・短歌作品です。(順不同・敬称略)

平成25年冬の作品

三葉芹かをりて茶碗蒸しの湯気
上州の身を切る風や鍬始
待春や鋤鍬を積む一輪車

柴崎加代子

紅少し濃い目に引きし初鏡
吉と出て胸撫で下ろす初みくじ
音たてて踏む霜柱雨戸繰る

高鳥洋子

受験子へ眠気覚しの紅茶かな
焼芋によごれし口を笑ひ合ふ
雑貨屋の奥に小さな置炬燵

長瀬三男

我慢することを覚えて寒に入る
特養の手作りおせちみな笑顔
蒲公英の踏まれて尚も強く咲く

平山富治

お年賀の手土産つつむ鮫小紋
しづしづと改札抜けて春着かな
臘梅や窓辺明るき診察室

今成公江

初詣押され押されて神の前
赤々と世界を照らす初日かな
年新らた福を招いて気分よく

蛭間節子

夕茜輝きながら陽は沈む
初日の出家族の笑顔祈りつつ
今年また嫁のつくりしつるし柿

木村トミ

園庭の具だくさんの芋煮会
木の実落つ里の晩秋深まりぬ

小磯和歌子

見上げたる成人の日の晴着の娘
初雪や風に踊散る朝かな
凍てつきて花苗日差しに立ちなおる

野村節子

北小を会場としたる国体の
 重量あげの思い出はるか

羽生市広報読むごとに
 この街に生き知らざりきこと多し

速水 浩

一人子をあやとりの如抱き交わす
 イオンモールの若き父母

影うつす池の水面に咲き盛る
 赤萩の花風なき日和

平山富治

輪になって日なたの庭で芋煮会
 笑顔あつめて感謝で食べる

クリスマス星の模様のくつ下を
 園からの心温まるプレゼント

木村トミ

デイサービス一足早き柚子湯にて
 手足伸ばして香りたのしむ

誕生日孫プレゼントのカーディガン
 一際ぬくしはだにしみ入る

小磯和歌子

戸の外を北風舞し窓ぎはに
 皆んな仲よくうたたねタイム

特養の手作りおやつのバイキング
 誕生会の楽しみひとつ

大塚洋子

デイの友思い出話のつきぬまま
 次を約束して帰り

柿の枝折んばかりに野鳥来て
 日ごとついばみにぎわいをりし

なつかしき友と会いたる病院で
 豆打ちてより味噌作り待つと

大和田モト江

降りしきる雪窓越しにながむれば
 被災地の人の苦労思わる

盆栽のひと足早き梅の花
 ほのかな香り心いやされ

島村静江

宿根の朝顔切りて真白なる
 樹液のにじみ命おもわる

冬ごしの朝顔の根守らんと
 感謝をしつつわらでおおいぬ

老の立つ外は木枯らし自動ドア
 話を聞きつ見守りつづく

野村節子

平成25年夏~秋の作品

父の忌の黄菊白菊あふれしむ
真青に菜をゆであげて今朝の冬
願掛けの寺とめどなく銀杏散る

柴崎加代子

栗のいがはじけしままに木に残り
よそ様で買えぬ生き斐薫藤園
日向夏やうなづきままに種のこす

平山富治

冬に入り嫁が洋服プレゼント
いろは坂紅葉美しニュース見る
熱々のすぶたおいしい薫藤園

木村トミ

母の背の温みに似たる小春かな
駅ふたつすぎて時雨の上がりけり
風花や星の輝く山の宿

高鳥洋子

枯葉散る梢に残る五・六枚
ひつじ田の見える窓辺や霜月に
霜月や初霜の声まだ聞かず

速水 浩

長き夜や合同句集読み返す
段畑の裾より蕎麦の刈られけり
被災地のこと話題なる秋祭

長瀬三男

晴天に恵まれ地区の体育祭
美味しそうにあまたの柿の色付きぬ

蛭間節子

黄金色刈り取り進み早米に
孫達の輝く笑顔運動会
二十年実のりなき柚子たわわなる

石井喜久恵

小春日や触れて古道の夫婦杉
冬に入る首をまわせばこきと鳴り
美しき名の札傾ぎ枯蓮

今成公江

大根を間引いて夕餉の食卓に
静けさや虫の音高く夜も更けて

小磯和歌子

父おらば立ち上ぐ藁の冬構
冬耕の狭庭もありて又楽し
大嵐三原の山を解かしけり

野村節子

明け方は降りいし雨の上るらし
 一番電車の通る音する

棕梠の花ほろほろこぼし夏は過ぎ
 比の家に住みて四十年経つ

早川裕子

サギ一羽いづこの旅へ向かうやら
 稲田の角で羽休めをり

今日行くよ 朝の電話にひと日待つ
 老いたる母の楽しみよ

大和田モト江

毎日が初心にかえり考える
 人生学ぶ介護士として

特養に実習生と過ごす日々
 孫に思える老の笑顔よ

大塚洋子

仏壇に飾ってほしいと頂きし
 庭に咲かせた菊の花ばな

柿熟れて頬いっぱいにほおばりて
 「これはうまい」と夫のつぶやき

島村静江

夕日背におのれの丈の影つれて
 薫藤園の前の道路で

駅伝のしんがり走るランナーに
 北風のふくびわ湖マラソン

平山富治

今日は何?楽しみにしている給食は
 秋の味覚の栗ごはん

園の祭り盛りだくさんのもよおしに
 飛入り参加で至福のよろこび

一面に真白きニラの花咲く中に
 うすむらさきのむくげ一厘

小磯和歌子

夕ぐれに良香を放つトランペット
 特養棟の窓辺に咲きぬ

鑁阿寺の五〇〇余年の黄葉大樹
 友と訪ねし小春の日なり

百歳の祝の姥に総理から
 金杯届き特養も湧く

野村節子

平成25年夏の作品

助手席にまで積み込みて今年米
校庭に描く人文字秋高し
食欲のやうやく戻り秋茄子

柴崎加代子

打ち水の効果も見えづ残暑かな
梅干して庭に香りの広がりぬ

小磯和歌子

稲刈機使う矢先の故障かな
あちこちで防災訓練秋に入る
秋祭り昔なじみの顔揃う

長瀬三男

思ひ出はあっさり消えてソーダ水
秋晴れやキャッチボールというデート
鉄泉と高潔な誕生花

平山富治

大利根の土手のにぎはひ秋燕
新米を思はず指ですくひけり
鬼灯や従妹に姉と慕はれて

今成公江

真夜に覚めしばし聞き入り虫の声
深々とこうべ下げをり稲穂かな

島村静江

明日となり二百十日の無事祈り
暑き日も間もなくおわり近づきぬ
年老いて涼しくなるを心待ち

蛭間節子

花芒抜いてせなの児あやしけり
見覚えの服着てゐたる案山子かな
稲の花こぼさぬやうに畦行けり

髙鳥洋子

地区みなで盛り上げ楽し納涼祭
猛暑日やさされし陽には肌悲鳴
締切の作句なかなか熱帯夜

石井喜久恵

連日の猛暑続きて水不足
 地蔵祭りは大雨の恵み

五十余年住みなれし家解体し
 思い出めぐり胸せまり来し

デイサービス額をつけて友二人
 何をかたるか笑い声立て

小磯和歌子

押し花を良き指導者のもと
 楽しんだ薫藤園の行事は多く

職員の思いあふれる慈悲受けて
 福祉の充実満足な日々

速水 浩

寝むられづ思いのめぐる夜半なれど
 澄みし虫の音心癒され

雷の遠く聞こえて間をおかづ
 雹まじりの雨風荒れる

島村静江

真面目なる顔映りをり少年に
 可能性といふ未来が宿り

交流ホール長寿と叡智を
 養いつ生る標が詰まり有り

漫然と生きて毅然と死ぬもよし
 兄が日記の最後の文詞

平山富治

歌を詠み花を趣味とし良き友と
 感謝の日々に喜寿迎えをり 

早朝の澄みし空気をふるわせて
 野鳩の鳴けば思い溢るる

つぼみあまた百合を買い来し道の駅
 産地岡部に盆は近づく

野村節子

平成25年春~夏の作品

雨風をしのぎし牡丹崩れけり
草笛の終始一本調子かな
溝浚へ隣近所のみな老いて

柴崎加代子

スイトピー話上手に聞き上手
菖蒲湯を浴びて三時の柏餅
新緑や御堂明るく風渡る

小磯和歌子

ぶかぶかの黄色い帽子一年生
隙間なく咲き盛りたり緋のつつじ
コーヒーに銀のスプーンと薔薇添えて

長瀬三男

ふとゆるむ風に臘梅香り出す
残雪となりたる雪の尚白し
初雪や桜の蕾固くとず

平山富治

緑蔭や甘き調べのサキソフォン
空模様変はりやすきよ木の芽和
薔薇園の棘の中なる手入れかな

今成公江

春雷や晴れと曇りの空見ゆる
早春の光となりて川流る
ひもすがら光まぶしき日永かな

蛭間節子

春嵐窓より見つつミルク飲む
ミニトマト植えて日に日に楽しくて
冬瓜を頂く時に母思う

速水 浩

からからと電車の通る子供の日
吾が里の宇宙はばたく鯉のぼり
友見舞う窓に百花のさくらかな

野村節子

デイ帰りまわり道して満開の
 さくら見物バスにゆられて

時ならぬ北風強く桜花
 粉雪の如く空に舞い散る

薫藤園の小さき菜園良き日和
 トマトの苗を赤黄交互に植う

小磯和歌子

電柱の蔭にぽっかり二つ咲く
 タンポポの黄の鮮やかな

重き壷に牡丹は活けられ床の間に
 華やぎ添えて咲き極まりぬ

早川祐子

花まつり花御堂に手をあわせ
 命の尊さ皆で感謝を

空見上げみごとな桜花ふぶき
 皆と一緒の花見はうれし

窓の外えんどう豆が芽ぶき出し
 ますます楽し園芸クラブ

大塚洋子

竿竹を売るは女の声なれど
 男が一人車を流す

冷え込みのきびしい朝の食膳に
 オムレツの黄身光りていたり

豚汁が出て嬉しき施設のごはん
 わが青春を息子ら知らず

平山富治

大利根の水門いよよ開はなち
 津津浦浦の田地潤う

ボランティアのよさこいの会来園し
 鳴子パチパチ楽しく集い平成24年

野村節子

平成24年冬~25年春の作品

桃色が好きで減りたる雛あられ
揺るるともなく揺れゐたり吊し雛
蔵めぐりすなはち雛めぐりかな

柴崎加代子

見渡せば白一面の雪の朝
成人の子等に舞散る雪の花
寒椿色のあざやかに咲きそめし

小磯和歌子

寄せ鍋を囲み栄転祝ひけり
独り居の日直室の余寒かな
ならやいや父の身凌ぐ年男

長瀬三男

小春日や息の面会に胸はずみ
車いす軽く進めて菊花展
湯たんぽを足もとおくや介護され

平山富治

冬牡丹紅の二輪の姉妹めく
ゆっくりと白雲流れ芽吹山
竹筒に挿したる一花雛まつり

今成公江

赤々と万物照らす初日の出
デイサービス太鼓囃しの節分会
茜差す雪富士山のすばらしき

蛭間節子

初雪に「ころばないで」と孫の電話
人多し節分祭の豆受ける
布団干し春陽の匂いぽっかぽか

石井喜久恵

道祖神一望千里枯野かな
春一番五百羅漢のうごめけり
冬うらら凍土雀ついばめり

掛谷弘史

デイサービス初雪晴れてお出迎え
グアムより無言の帰宅母と祖母
子を抱き柩に寄るる若き夫

若旅あさ

さくさくと音し足裏の霜柱
蠟梅の香るホームに集いおり
雪の富士デイの送迎バスの窓

戸ヶ崎ハツ

寒雀梢に数羽春となり
誰が植えしパンジー特養の庭いっぱい
きさらぎの青空に浮く雲ひとつ

速水 浩

初雪のしばし解けずに裏通り
雪晴れの日ざしダイヤの光かな
神の業境もなくす雪の朝

野村節子

初めての雪にとまどう猫たちは
 何思うやら納屋に入り込む

毎年の干柿作りほめられて
 身振り手振りの話に成りて

デイ友に習いし趣味の毛糸あむ
 寝る間惜しみてマフラーを編む

小磯和歌子

初雪に勤務帰りの銀世界
 気をつけてね と老いの一言

特養のリハビリ体操続けをり
 食欲増進元気になりし

大塚洋子

特養の窓下植えしパンジーの
 思い思いに咲きて楽しみ

喜びも辛さもすべて受け入れて
 薫藤園の職員やさし

電灯のやさしい光につつまれる
 ビニールハウスの苺は甘し

平山富治

如月の朝日に光る瓦家を
 野鳥のむれは舞いつ飛び立つ

きさらぎの頭上の空を名も知らぬ
 野鳥百羽の舞うは美しよ

野村節子