薫藤園ご利用者・ご家族、職員の俳句・短歌作品です。(順不同・敬称略)
平成24年夏の作品
初鵙やたらずメロン匂いけり
負けて泣父の忌日の遠からず
待ち人の来き転びては泣き運動会
柴崎加代子
あさがおや濃い紫の薫藤園
黄昏がれて庭の十薬花明り
夫送りひとり守りし地蔵盆
小磯和歌子
豊作の小玉西瓜の甘さかな
梅干すや匂い広がりどこまでも
手作りの枝豆囲む夕餉かな
長瀬三男
富士ながめ車中の友とデイの旅
子等集い祝う辰年たん生会
連山を位地と定めて子の安否
大和田モト江
合掌に似たるはちすの蕾かな
群衆の照らしだされて揚花火
新米の炊き上がりたる電子音
今成公江
曾孫の重くなりしよ汗ぬぐふ
最高の暑さに耐える気力かな
好天に恵まれ親子運動会
蛭間節子
四世代の生花手にして迎え盆
通知表見せにくる孫夏休み
豊作に夫の笑顔よ夏野菜
石井喜久恵
宝石のごとく賜わりさくらんぼ
利根の水わけ合い育ち稲豊か
挿菊の白根に重き土まとう
野村節子
九十四歳歩みつづけて幾星霜
薫藤園の今日の幸せ
金久保八千代
行楽の客で賑わう道の駅
季節の野菜土の匂いえり
薫藤園ゴーヤを植えて日影にし
一石二鳥の栄養素なり
薫風に青田の水は光りおり
小雀の群れ低く飛び交ふ
小磯和歌子
長生きは先を急がず薫藤園で
くつろぐ生活百五を目差す
我が理性失ひかけし時も有り
挫折に堪えしは職員さんの咤声にて
平山富治
公民館なれぬ踊りに向かいつつ
汗して励む祭に向けて
島村静江
どこぞかの小学生吹いている
ハーモニカ聞こえ夏休み来る
緑陰にトラック止めて携帯に
指示受けているドライバーの声
公園に花むくげ咲き初めて
秋の近付く気配と成りき
早川裕子
飲み込みを確かと守りて介助せし
ミキサー食のひと匙の力
震災の不明者捜すダイバーの
瓦礫に足の埋もれ動かず
むさし野を見渡す限り黄金色
続く稲田に白鷺の舞う
野村節子
平成24年春の作品
特養もデイサービスも真剣に
書道にうちこむ車椅子の方
先立ちし弟思う傷心の
デイサービスに心いやさる
病弱の妻を残して旅立ちし
心情おもい涙あふるる
小磯和歌子
ふくよかな白き花載せ輝ける
泰山木咲く六月の来る
図書館は若葉の香りに包まれて
思わず見上げ深呼吸する
早川裕子
梅雨晴れて緑に萌える
薫藤の庭にわが命あり
歳重ね今年も迎える誕生日
吾満ち足りし薫藤園で
あらシーツが栄養を吸っていると
朗らかにシーツを替える白衣の乙女
平山富治
夜勤入りとなりたる若き介護士よ
特養棟の老いも明るき
軒下の三輪車と熊のぬいぐるみ
役目おわりてつぶらな瞳
野村節子
世の中に落ち合ふ習ひ三姉妹
再会を約せしベンチ花ふぶき
いく重にも人垣花の上野山
柴崎加代子
母の日の母へ作りし卵粥
夏立つや果実の花の咲き揃ふ
両の手に重く受け止め藤の房花
長瀬三男
手作りの緋鯉 真鯉の鯉幟
春の夜の地球をゆする程の風
デイサービス送迎バスの花見かな
蛭間節子
庭先のまぶしきまでの柿若葉
一二輪咲き初め苗木買い求め
デイサービスみんな家族となりきりて
小磯和歌子
大壺に桜活けられ仏画展
お茶席の紅白の幕花の土手
ワイシャツの上に裃春祭
今成公江
はつなつや温泉の湯のやわらかし
利根川の土手に歓声土筆摘み
見上ぐるも見おろすもよし山つつじ
野村節子