薫藤園ご利用者・ご家族、職員の俳句・短歌作品です。（順不同・敬称略）
平成20年秋～冬の作品
しろがねの月の残れる初御空 諍ひしことは書かずに初日記 参道を風が駆け抜け達磨市
漂へるよべの柚子湯のかをりかな サンタ待つはずが寝落ちてクリスマス ふところに大沼小沼山眠る
良き話決みて落ちつく松手入れ 手に取りて見たき今宵の窓の月 冬鳥の影を写して朝日影
とる人もなくて青空柿たわわ 来賓と共に昼食敬老会 限りなく晴れて筑波の雪化粧
回診医やさしき言葉初夏の風 野鳩来るだけで良し目覚かな 富樫氏の迦陵頻伽 に感極む
澄みわたる朝の青空雪の富士 裸木や枝にしっかり芽を育て
募金せし児らへかがめて赤い羽根 露天風呂肩に紅葉のひらと散り
変わらずに生家の垣のお茶の花 書ききれぬ予定師走のカレンダー
念入りて袋夜なべにお年玉 一等星二つ並んで三ヶ月と 主なき庭を色どるミカンかな
子供等のマラソン大会冬初め 強霜や解けて干竿流れ落つ
狼の日暮れて山に佇めり 肌寒や夫の一人の夕飼かな 枯葉舞ふ朝の笑顔の福祉バス
ーがんとの闘いー
もともとは嫌いなかゆをすすり込む
しそ梅干しの助けを借りて
点滴の針あとのこり細い腕
つくづくながめ手術六日目
廊下には樟脳の香りほのかして
敬老の日を訪うひと多し
四谷尾の山にのがれし落武者の 苔むす墓に今は眠りぬ 弓矢射ていくさにやぶれし御先祖の まつりし寺に徳をしのびて 故郷のせせらぎひびく山寺に 向かいて祈る老いし日々
定年後早や十二年さみしさも 今は楽しく週一デイに 北国の雪の斜面を走る吾子 五十歳となりて公務を守る
婚礼の友の笑顔は晴れやかに 北軽井沢紅葉のチャペル 介護士の手づくり門松日に映えて 正月を待つわが特養ホーム
遙かなる高尾の峰に木霊する 六根清浄唱えし登る 先達の握る手のみを身に託し 滝行終われば体熱たり
あさひうけ光り輝く大海原は 夢と希望をはこんでくれる
平成20年春～夏の作品
防災の訓練に炊く今年米 豊年や野良着で参る父母の墓 一房を手秤にのせ葡萄狩
波近しこれより急坂初御空 春暁や駅長一人客一人 風薫る土蹴り走り出す球児 薫風や窓いっぱいにせまりくる
長き夜の母に聞かせるよき話 母の日は母似の姉にあまえけり ふる里へ呼ばれているよ行々子 向日葵や変わらぬ笑顔再会す
月下美人開く力にふるいけり 菜の花や桜並木の根じめかな ドライブや青葉の中をまっしぐら
曽孫の生まれし便り風薫る 天ぷらの衣透かして茄子の紺 鉢のまま垣朝顔となりにけり
板東太郎緑の衣裳に若返り 山茶花や紅おちこちに雪の上 踏切の音とだえたり納涼祭
吸般を窓に透かして雨蛙 光見て音も楽しき花火かな 稲光りあとに轟く地鳴りかな
デイサービス持ち寄る自慢の夏野菜 いとし子の胸に眠りて風薫る デイ帰り寄るホテイアオイの見頃時
ひぐらし鳴く我が身癒せし書斉かな 盆過ぐる田ごとの実りどこまでも 石峰の白馬雪渓崩落知る
鳳仙花いつものところ紅い色 百日紅面会多く笑ふ声
夏休み年に一度の楽しみは 祖父母へ感謝の家族の旅行 将来は介護の仕事すると言う 今あらためて知る感謝心 吾が子に見せた私の仕事場 戦争の話しを聞いて豊かなる
風薫る利根の水門開けてより 無事に稲穂の稔りて広し 携帯に二蔵の孫子の写真のせ その笑顔に元気もらいぬ
オリンピック最後の種目マラソンは 走る苦しみ我に伝わる 雪渓の崩落知りて 過ぎ山岳の思い巡りぬ
はるかなる遠く故郷はなれ来て 老いて夢みる薫藤園で そよ風にゆれる稲穂にかこまれて 心安らぐ誰はばからず
亡き母が夢に出で来し吾に言う 酒ほどほどに飲んでおるかと ほんとうに嬉しかったよ寮母さん その優しさを胸にしまって